『キングダム』に登場する蒙恬(もうてん)。
父は蒙武(もうぶ)、祖父は蒙驁(もうごう)といい、元々は斉に住んでいて蒙驁の代に秦に移住しました。
『キングダム』では同じく武官貴族でエリート意識が強い王賁とは違い、信とも気軽に口をきく蒙恬ですが、蒙恬のこれからの人生はどうなってしまうのでしょうか?
今回は蒙恬の史実の人生に迫ります!
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蒙恬は史実でどんな人物?
蒙恬は猛将のイメージがある父の蒙武とは違い、線が細い人物。
当初は文官として活躍し、訴訟や裁判などを担当する人物でした。
確かに、男らしくかっこいいというよりはかわいらしい、少し変な言い方かもしれませんが武将らしくない風貌であると言えるかもしれません。
蒙恬は史実でどんな人物?:文官から武将に転身
紀元前244年、秦王政は楚を攻めるべく軍を起こします。
ここで老将の王翦は60万の軍を要求します。
しかし信は、20万でやってやる!と威勢のいいことを言い、政は信に20万の兵を与え、その副官に蒙恬を就かせました。
貴族の蒙恬を信が副官にできるくらいですから、信は相当に成長し、出世できたということでしょう。
蒙恬は史実でどんな人物?:楚での快進撃
信と蒙恬のコンビは、楚に入ると軍を二手に分け、連戦に連勝を重ね、城父に辿り着きます。
共に勝利を続けていったことに気を良くし過ぎた二人は、楚を滅ぼしたようなつもりになるほどでした。
しかしそれまでの勝利はすべて、楚の大将軍であった項燕の策略によるものだったのです。
項燕の楚軍は油断している秦軍の背後を三日三晩追い続け、ついに城父に到着。
これまでの恨みを込めて攻め込みます!
油断していた秦軍はほとんど成す術無し…。
20万の兵士の大半を殺されてしまうという結果になってしまうのです。
蒙恬は史実でどんな人物?:逃亡するも…
信と蒙恬は項燕の猛攻からただ逃亡するしかできませんでした。
大敗北という結果でしたが、秦王政に処分されることはありませんでした。
さらに、紀元前221年には蒙恬は家柄で将軍に任命!
20万という非常に多くの犠牲を出してしまったにもかかわらず何の処分もなかったのは、それだけ蒙恬が政の信頼を得ていたということなのでしょう。
蒙恬は史実でどんな人物?:万里の長城建設
紀元前215年、将軍になった蒙恬は、30万の軍勢で匈奴と戦い、オルドス地方を奪還することに成功。
始皇帝はこれを大変喜び、このことを契機として弟の蒙毅(もうき)も取り立てられるようになります。
そして蒙恬は、再度の匈奴侵攻に備え、万里の長城の建設に着手します。
万里の長城自体はそれぞれの国が遊牧民対策で造っていましたが、始皇帝は万里の長城を繋ぎ合わせ、中華全土を防衛できるようにしようとします。
蒙恬はその現場責任者として、実際の築城に当たったのです。
蒙恬は史実でどんな人物?:転換点
匈奴を警戒している蒙恬の元に、焚書坑儒(ふんしょこうじゅ=書を燃やして儒者を生き埋めにすること)を批判したため、始皇帝長男の扶蘇(ふそ)が左遷されます。
扶蘇は勇気のある人物で、次の皇帝と人々から注目されていました。
扶蘇と蒙恬は性格が合ったようで、共同して匈奴に備えていきます。
そして、次期皇帝の側近になったという事実は、蒙恬を更に出世させるはずでした。
そんなとき、紀元前210年に始皇帝が亡くなってしまいます。
始皇帝の側近だった趙高(ちょうこう)は遺言を偽装し、扶蘇と蒙恬に死ぬようにという勅命を出してしまうのです。
さすがにこれはおかしいと思った蒙恬。
真偽を確かめようと扶蘇に言うものの、親を想った扶蘇は勅命を信じ命を絶ってしまうのでした…。
蒙恬も態度を決めかねていたのですが、即位した二世皇帝胡亥(こがい)から短剣が送られてくると、これまでと観念して蒙恬も命を絶ってしまうのです…。
蒙恬は史実でどんな人物?:扶蘇と出会ったことが仇に
蒙恬は、将軍としては特別優秀な人物だったわけではありません。
将軍の位でさえも、家柄の関係で自動的になったようなもの。
自分の実力、ということではありませんでした。
更に不幸だったのは、蒙恬が赴任したオルドスに扶蘇がやってきたということです。
扶蘇は始皇帝にも遠慮なく意見を伝える人物でしたし、特に言論弾圧の政策である焚書坑儒には儒学を擁護する立場から強烈に批判していたのです。
始皇帝の側近だった趙高から見れば、現政治を批判する非常に邪魔な人物です。
そんな扶蘇と意見が合う蒙恬もまた、政治には必要ないと判断されます。
扶蘇が皇帝になってしまえば、趙高自身の命が危ない。
そう判断した趙高は、扶蘇ごと蒙恬さえもその人生を終えさせてしまうのでした…。
非常に悲しい結末を迎えてしまう蒙恬なのです…。
蒙恬は史実でどんな人物?万里の長城作るも中華統一後に一族が滅ぶ将軍のまとめ
蒙恬の死後も、蒙毅も処刑されるなど、蒙家に関わる人物はすべて殺されてしまうという非常に悲しい結末を迎えてしまう蒙恬。
蒙恬の子孫も完全に途絶えてしまうのです…。
寂しいですが、やはり歴史の中で誰と組み、誰に従うかというのが、特にこの中華統一の時代は顕著に表れていたのだということですね…。
『キングダム』の蒙恬はこの後どのような活躍を見せるのか?
史実のような悲しい最期にはならないでと願うばかりです…。