『キングダム』630話、631話で登場した「天地の間」
これは死者が行く手前の場所、という意味合いで登場してきましたが、おそらくは賛否両論あったのではないでしょうか。
信、という主人公が死んでしまうほどの戦いを経て、この先の展開のために蘇らせる必要があるために登場したのかなと思うのですが…
リアリティが重視されてきた『キングダム』にとっては、果たして本当に必要な展開だったのかと思うと難しいところだったのではと思うのです。
天地の間とは何だったのか、今後『キングダム』に与える影響とは何かを考察していきます!
Contents
天地の間とは
先述した通り「天地の間」とは、死者が現世からあの世へと行くために通る場所。
ここから長い階段を渡ってしまえば最後、死者としてあの世へと逝ってしまうことになります。
現世への最後の砦という感じでしょうか。
ただ、信の様子を見ていると、現世からやってきた羌瘣の姿は見えていませんでしたし、さらには現世での出来事も朧げにしか覚えていない、思い出せない様子がありました。
つまりはほとんどの死者が、この天地の道を通る間にはもう現世への想いをほぼ忘れ去ってしまっていて、何事もなく通り過ぎる場所なのでしょう。
信などの様に、些細でも未練がある場合には、縁があり既に亡くなっている人物が現れて最後の審判を告げる、というような場所なのではないでしょうか。
光の穴
この天地の間で、まだ現世でやり残したことがあると思い出した場合、「光の穴」というものが現れます。
この光の穴に入ったとき、現世へ戻ることができるようになると。
それ以外の方法はおそらくなく、やはり最後の審判を経て自分自身でやり残したことを思い出すほか、光の穴を呼び出す方法はないのでしょう。
天地の間との関係性
では実際、この天地の間を訪れた信と羌瘣がどのように関わったのかを見ていきましょう。
信の場合
信の場合は漂が現れました。
信の夢に一番関係している人物ですね。
この漂がいたからこそ、信は今もなおその夢に向かって突き進むことができ、そのために成長することができ、そのために様々な人物と出会うことができました。
夢半ばで亡くなってしまった信だったからこそ、漂が現れ、本当にそれでいいのかというように信にメッセージを伝えてくれたのでしょう。
ただ、『キングダム』631話で判明するのは、直接的には「まだここにきてはいけない」とか信を突き返すようなメッセージは送れないということです。
あくまでも信自身に考えさせる、思い出させるように質問を繋いでいく素振りがあったので、そういうことからも漂はかなり賢い戦略家だったことがここでも分かりますね。
そしてその手助けとなったのが現世から禁術でやってきた羌瘣でした。
羌瘣は現世の人間であり、おそらくはまだ死んではいないということで天地の間での行動が極端に制限され、身動きもろくに取れない状況でした。
しかし信をどうにか連れ戻したいというただその一心で、信にしがみついて階段を登らせないようにし、信の動きを止めようとしました。
このことで信自身に、まだここから先に行ってはいけない、やるべきことがあったのかもしれない、という気持ちにさせてくれたのは紛れもなく羌瘣がいたからこそだったのでしょう。
そのため、信ほどの強靭な精神力の持ち主であろうとも、天地の間においては既に様々なことを忘れてしまっており、漂というかけがえのない人物が問いかけても思い出せないくらいの、ある意味抜け殻状態になっていた。
だからこそ羌瘣が今回禁術で天地の間にやってきてくれたことは救いだったのでしょうね。
>>>信が蘇るには羌瘣が必要?
羌瘣の場合
そんな羌瘣ですが、寿命を全て捧げると宣言して辿り着いただけあって天地の間ではろくに動くこともできず、何とか信を押さえつけることはできた、そして信を光の穴へと送り込むことはできましたが、それ以上のことはできませんでした。
自分のことは置いた行動になってしまったため、完全に死ぬ覚悟でいたのでしょう。
そんなときに現れたのが、松左と去亥でした。
羌瘣と特に深い関係のある人物、ということではなく、飛信隊の一員として近々の戦いである朱海平原の戦いで亡くなった人物でした。
漂もそうですが、既に亡くなっている人物であることは間違いありません。
去亥に至っては真っ二つになって亡くなってしまったので、現世での死に方がどうであろうとも生きていた時の元気だった頃の状態で登場するものなのでしょう。
しかし羌瘣に対して行ったことは、ある意味強制的に現世へ送り返すというような行動でした。
信に対しての漂は、直接的に信のやるべきことを思い出させることはできなかったようですが、羌瘣に対しての松左と去亥は逆で、無理やりにでも羌瘣を起こし、光の穴に投げ入れるというような直接行動でした。
この違いはやはり、信は一度亡くなった人物であり、羌瘣は亡くなってはいないものの禁術で無理やり天地の間へ訪れた人物=ここに来るべきではなかった人物、だと言えるのではないでしょうか。
そのため、完全には死んでいないのが明確だからこそ、羌瘣を生かすためにも無理やり現れ、自分たちのリーダーを頼むという意味でも現世へと送り返したのかもしれません。
>>>羌瘣に実在モデルはいる?
天地の間というオカルト展開はキングダム的に無理がある?
さて、このような展開の「天地の間」だったのですが、『キングダム』という漫画としてはちょっと展開的に極端すぎるほどいきなりな方向性だったのではと思います。
これまでの『キングダム』はいい意味でリアリティがあり、ファンタジーではなく歴史物でもあるので、当然ながら一度亡くなった人物は蘇ることはありませんでした。
ただ、主人公だからこそなのか、信に対してはこれもまた極端なくらいに「お前はまだ死んではいけない」「おれたちはどうなるんだ」「やるべきことがあるだろう」「置いていくな」などと飛信隊のメンバーが呼びかけました。
信の物語だからこそ、まだ終わらせてはいけない、ということだったのでしょうが…。
それでいて羌瘣が禁術をもって死者のもとへと行く、というある意味オカルト的な展開になってしまうのは、どうなのだろうと感じた読者も多かったのではと考えています。
羌瘣の巫舞や龐煖の両親のハンドパワー、精神世界の出来事など、これまでも様々に完全リアリティではない要素もありました。
ただ、それはないだろう、とまではいかない内容ではあったので許されてきた感はあります。
しかし今回、生死についてまで、しかも主人公だったからこそ蘇らせようということになったのかと思うと、やはり違和感はあったのではないかな…と思います。
信復活のシーンは感動的ではなかった
ただ、原作者の原先生も、今回の展開はかなり考慮したのではとも思います。
それは『キングダム』631話で、現世に信が蘇ったシーンは、感動的な流れにはならず、まるでそこに居てはいけないものを見るかのような驚愕した表情があれば、何で蘇ったの!?とえええ~~~!!!とびっくりして腰を抜かしているような、少しコメディな感じだったのですね。
目が飛び出ているというようなギャグマンガ的な感じではないのですが、若干違和感のある展開でしたよ、と原作者も登場キャラとしても思ってしまったからこそ、コメディ展開にしたのだろうとも読み取れます。
まぁ確かに、『キングダム』の世界の中でも武力最強とされた龐煖との一騎打ちで、これでもかというくらいに滅多打ちにされまくった信が、根性で最後に王騎の矛を振り下ろして龐煖を両断して倒した、という流れでしたが…
そんな武力最強の相手と戦って、力の差がある信が死なないわけにはいかないだろう、という苦渋の選択だったのかもしれませんしね。
ただ、『キングダム』の主人公として信をそのまま死なすわけにはいかなかった。
そのためにこれもまた苦渋の決断で登場させた「天地の間」だったのかもしれません。
天地の間を訪れて蘇った信の今後は?
さて、信がこの後どうなるか、ですが、ケロッとした感じで、俺何をしていたんだ?というような表情で起き上がった信なので、もしかしたら天地の間での出来事を覚えていない可能性もあります。
漂に会ったとか、羌瘣がいたとか、あとから話を聞いてもにわかには信じられないかもしれません。
ただ、一度死んで蘇ったということ、漂から改めて夢を思い出させてくれたということ、そして龐煖との戦いでの成長などもあり、さらに信自身の成長につながった可能性はあります。
そしてある意味今回の「天地の間」は今回限りともいえるでしょう。
禁術でもありますし、こうした術を使えるのは羌瘣以外にはもういてほしくはないですしね。
一度死んだ人間が蘇ることは二度とない、というのは本当にそうで今回は異常な確率を勝ち取ることができただけ。
信がこの先同じように死にかけることもなく、「天地の間」を訪れることもないと思います。
ただ、この先の展開で最も危険に成り得るのが、楚との戦いであり、有名武将が大勢亡くなってしまう戦いではあるので、天地の間が現れることは無くても、龐煖との戦いの様にこれまでの戦いで亡くなった人物が再び魂で登場というのは再度あり得るかもしれませんね。
天地の間で起きたオカルト展開!リアリティあるキングダム的にこの展開はあり!?のまとめ
おそらくは賛否両論あったとは思いますが、何はともあれ信が再びこの世に戻ってきてくれたのはホッとしましたね…。
でないと『キングダム』第1話のあの李信は信ではなかったのか!?という話になってきちゃますし。
そしておそらく信と羌瘣との絆もさらに深まるでしょうし、飛信隊としても更に団結力が高まるきっかけにもなっていくのかもしれませんね。
まずは李牧を討ち取るのが先決にはなるでしょうが、信がこの天地の間での出来事を羌瘣から聞くことになるのか、どんなリアクションを取ることになるのかがある意味楽しみですね!